「時代に見る冷凍食品の役割」

今年開催された東京2020オリンピック・パラリンピックはコロナ禍の影響により、無観客で開催され、実際に現地で観戦することはできませんでした。しかし、今はインターネットからリアルタイムで情報が入手できる時代となり、選手村で提供された大手冷凍食品メーカーの冷凍餃子が、選手の間で「うますぎる!」「人生を変えた!!」などとSNSで金メダル級の話題になったことはまだ記憶に新しいお話ですね。

                          

前回1964年に開催された東京オリンピックでは、各国の選手団に対し、安全でおいしい食事を大量に提供するため、選手村の料理長・村上信夫氏(後の帝国ホテル初代総料理長)が冷凍食材を採用し、これが各国選手たちから大好評を博し、冷凍食品が注目されるきっかけとなりました。((株)ニチレイ様HPより一部抜粋)

冷凍食品といっても野菜や肉などの食材を冷凍して利用するもので、現在の冷凍食品のイメージと異なりますが、当時は料理の味を均一に保ち、かつ大量に調理ができる画期的な方法でした。しかし、シェフ達は新鮮な食材を使うのと同じ味を出すことに大変苦労されたようです。

57年の時を経た現在では、冷凍食品の加工技術の発展により、餃子やチャーハンなど様々な調理食品が冷凍され、電子レンジで簡単に美味しく食べられるようになった訳ですが、これも女性の社会進出や世帯人数の減少等、社会環境の変化に冷凍食品が寄与しています。

                    

また、ここ数年の社会的な課題として食品ロスの問題があります。日本では年間2,531万トンの食品廃棄物等が出され、まだ食べられるのに廃棄される食品は600万トンあります。生鮮やチルドより賞味期限が長いこと、行き場のない原材料を加工し長期間保存できるという点で、冷凍食品は食品ロス削減に多いに貢献できる食品加工技術になっており、SDG’sにも貢献しています。

 これからも今回の「GYOZA」のように日本の冷凍食品は、保守的と言われている食文化のボーダーレス化を加速させていくに違いありません。世界ではコールドチェーンが確立されていない国もまだまだありますが、今後冷蔵庫や電子レンジなどの調理器具の普及と共に冷凍食品の役割はより大きくなることでしょう。

 最後に行き過ぎた加工は本来の食材が持つよさを損なう恐れもあります。生きた原材料に触れる機会が少ない現代だからこそ、次世代のためにもより素材の特長をできるだけ活かせるような技術を確立していくことが必要だと思います。

次回、フランスのパリオリンピック・パラリンピックではどんな食が注目を浴びるのか今から楽しみにしています。

By AIB

「時代に見る冷凍食品の役割」